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2020年、大学入試が大きく変わる

現在の「センター試験」が廃止され、新たに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が実施されます。
新しい入試では、回答がない設問に対して「問題発見」「問題解決」をし、それを論文にする入試が導入されます。つまり今まで求められていた「暗記力」から、「思考力」「判断力」「表現力」が求められることになります。
英語に関しては「読む・聞く・書く・話す」の4技能の評価が重視され、「話す」ではただ話すのではなく、「自分の意見を話す」レベルまで求められます。具体的には質問に対して45秒にまとめて話す、ということが求められます。また理数では、東京大学は「プログラミング」の推薦入試の実施を発表しています。
またこの共通入試だけではなく、大学独自の個別入試も変革します。それは「合教科」や「総合型」試験と呼ばれており、各教科の区別がなく総合的な学力が問われる問題です。例えば、社会の問題だけれども文章読解と英文読解が必要な問題や、国語の問題だけれども社会問題を知らないと答えられない、といった問題です。また「こういう問題があります。あなたならどう解決しますか?」というような問題解決型の出題で、あらゆる教科の知識と自分の意見を加えて思考しないと解を導けないような問題も出てくると言われています。
また文部科学省からは、「小論文」「面接」「集団討論」「プレゼンテーション」「調査書」「活動報告書」「資格・検定試験などの成績」「各種大会などでの記録」などを入試に活用する方針も打ち出されています。 つまり、今までのように先生が教えることを覚えるような受動的学習から、より「能動的学習」が必要になります。
その能動的学習のことを「アクティブ・ラーニング」といいます。

授業で導入される「アクティブ・ラーニング(能動的学習)」とは?

2020年から小学校を先駆けに「アクティブ・ラーニング」が始まります。 これは中央教育審議会が進める学習指導要領の全面改訂のひとつで、知識だけではなく倫理的、社会的能力、経験等を含めた能力の育成を図るために、「発見学習」「問題解決学習」「体験学習」「調査学習」「教室内でのグループ・ディスカッション」「ディベート」「グループワーク」などの実施します。
小・中・高校のアクティブ・ラーニングでは、「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」としたうえで、学習を従来の「何を」から「どのように学ぶか」を重視し、このアクティブ・ラーニングは学習意欲向上にも効果的だと義務付けています。また人材のグローバル化育成のためにも、有効な手段だといわれています。
このアクティブ・ラーニング等の授業革新のために、文部科学省は「チーム学校」という計画案を発表しています。

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文部科学省の構想「チーム学校」とは?

2014年から文部科学省が推進している「チーム学校」については、同省の資料が非常にわかりやすいので、詳細を知りたい方はこちら(別ページに飛びます)をご覧ください。
まずは2015年に日本労働組合総合連合の研究所が発表した調査より、労働者平均と中学校教員の比較では、労働時間は平均9時間15分に対し、中学校教員は13時間21分と4時間も多い結果でした。
また睡眠時間は平均7時間4分に対し、中学校教員は6時間3分と1時間短い結果。さらに顕著な休日の睡眠時間は、平均9時間16分なのに対して、中学校教員は6時間52分と2時間もの差があります。これは土曜授業や部活動など、休日も学校に出勤する傾向が強いことを示していると思われます。
一方で文部科学省は、40人学級から35人の少人数制学級を目指しています。そこで考えられたのがこの「チーム学校」構想で、この構想の3つの柱とは、「①先生の仕事の役割分担の見直し」「②資格を持つ専門スタッフの充実」「③地域人材の活用」です。
まず「①先生の仕事の役割分担の見直し」とは、先生は教える仕事に集中できるように、事務の仕事や先生以外の人ができる仕事は先生から切り離しましょうというものです。
「②資格を持つ専門スタッフの充実」とは、臨床心理士、社会福祉士、看護師、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を非常勤としてもっと拡充しようというものです。
「③地域人材の活用」とは、様々な経験をもつ地域の方に、授業や部活のサポートスタッフ(支援員)として学校に来てもらおうというものです。例えば海外在住経験の方に英語授業のサポートをしてもらったり、スポーツや芸大出身の方に部活サポートをしてもらうおう、というものです。

2019年「専門職業大学」設立へ

文部科学省は、 情報技術(IT)や観光、農業など成長分野で即戦力となる人材を育成するのが目的で、職業教育に特化した新しい種類の大学設立を目指しています。この動きの背景として、中央教育審議会は、「社会のニーズは多様化し、学校での職業教育の充実が必要」と述べています。
この学校の特徴としては、教員のうち4割以上を当該分野の実務経験が5年以上ある「実務家教員」にするとしており、卒業単位の3~4割以上を実習科目にし、企業での実習も義務づける方針です。
対象は高校卒業者だけではなく、社会人にも門戸が開かれ、卒業すると大学と同様「学士」が与えられる方針です。
このように、社会人になる以前より職業についての技能の取得が求められ、同時にそれらを教える実務経験者のニーズも高まることは必須といえるでしょう。

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世界の動向

米ハーバード大は2016年に、入試から学力テストを選択制にして、その代わりに家庭での貢献やボランティアの参加等を評価する、と発表しています。つまり「今まで何をしてきたか?」も評価するということです。
また世界の諸外国では現在でも、大学入試がない、大学に進学するつもりでも高校を卒業してすぐに大学に入らない、というのはよくあります。例えばデンマークでは、大学入試がなく、大学に関しては高校時代の成績で学べる分野が決まります。例えば成績がよくないと、医者や弁護士になるための学部を選択できません。では成績が悪くても医学部に行きたい学生はどうするかというと、1年間アフリカなどの海外にいってボランティアをする、アルバイトをして社会経験を積む、などするとポイントが加点されて、学びたい分野に進学できるという仕組みです。
海外の仕組みが素晴らしいということではありませんが、これだけ国際化が進むと日本の制度も変化していく可能性が大いにある、ということは否めないのではないでしょうか。